もっとスカーフを使ったおしゃれを楽しみましょう!

先日、帽子やスカーフの選び方やアレンジの仕方など服飾雑貨の研修を行いました。

スカーフアレンジは皆さんとても真剣にそして楽しそうに受講されていましたが、中々きれいに仕上がらないことも多く、基本的なアレンジもままならないという印象でした。

皆さんは普段スカーフを使ったコーディネートされますか?

シンプルで服自体はそんなに印象的ではないものでも、スカーフをコーディネートするだけで一気に華やかになったり、シックになったり、同じ服でもイメージを変えることができます。

似合いにくい色の服を着ていると、肌色がくすんだり、血色が悪く見えたり、肌のトラブルが余計に目立ってしまったりするものですが、自分に似合う色のスカーフを持っていると、そのスカーフでワンクッションおけるので、より肌をきれいに見せて着こなすことができたりもします。

薄いけど身につけていると意外に暖かいし、軽くてコンパクトに折りたためばカバンにも入れられるので、寒暖の差があったりする今みたいな季節には温度調節にも役立つとても便利なアイテムです。

スカーフアレンジの実習をするとよく「CAさんみたい!」と言われますが、確かにCAさんの制服にはよくスカーフが採用されていますね。同じ制服でもスカーフには色、柄にバリエーションをつけて、アレンジもそれぞれで少しの個性を出しているという航空会社もあります。私自身、「さっき頼んだCAさん誰だったかな?」と探すときにスカーフを目印にしている時があったりするので、お客様にとっても便利なものかもしれません。

研修でもスカーフ使いに慣れていないな…と感じることは多いのですが、街中でもおしゃれにスカーフを使っている人はあまり見かけません。若い女性はなおさらです。あまり身近に感じられていないのではないかと思う今日この頃です。親しみを持ってもらうために、まずはその歴史を振り返りたいと思います。

スカーフの起原は明確ではありませんが、北欧民族の「防寒用の首巻」 として用いられたのが始まりと言われています。

スカーフという言葉が使われるようになったのは16世紀後半のエリザベス1世の時代、当時の貴婦人達は日焼けを防ぐために布を着けており、装飾を施しておしゃれを楽しんでいました。それがスカーフと呼ばれました。おしゃれに使うほか、小さくて軽く、持ち運びに便利な防寒具としても重宝されていたようです。

ルイ14世の時代(1638〜1715年)には紳士貴族達に「首元の飾り」として愛用されました。

ルイ14世の肖像画でも描かれていますし、同じ時代の「ラ・バールとその演奏家たち」の中にも描かれています。

18世紀ごろにはシルクや豪華なレース、金糸、銀糸の刺繍など 男性の装飾には欠かせないものになっていきました。以前のネクタイのコラムでも書きましたが、男性にはその後クラヴァットから今のネクタイに変化していき、女性にはスカーフのまま残るというのも面白いですね。

18世紀末にはカシミヤや白綿のスカーフの流行が続き、肩に垂らしたり、背中にかけたり、ドレスのシルエットとともに変化しながら女性の装いの優雅さを強調するものになります。

マリー・アントワネットの画家と言われたヴィジェ・ルブランの描いた「モーレ・レイモン夫人」や「クリュソル男爵夫人」にもスカーフが登場しています。また、ニコラ・ド・ラジリェールの「美しきストラスブールの人」には豪華なレースの付いたスカーフが。描かれています

1930年代になると、スカーフはブルジョワジーのステイタスシンボルとしてもてはやされます。

1950年代にはグレース・ケリーやオードリー・ヘップバーンのスカーフルックが人気を集め、様々なスカーフ使いが見られるようになりました。その後スカーフの端にクチュリエの名前がつけられたものが広まっていくようになります。

こうして見ると現代のように女性のコーディネートをより華やかなものにするアイテムとして使われ始めたのは、18世紀末からということになります。

エルメスの有名なスカーフ“カレ”(正方形の意)は1937年に誕生しています。

第1号となったのは「オムニバス・ゲームと白い貴婦人」という名が冠されたものでした。

高級馬具の店として名を馳せていたエルメスは、職人の技と高級なシルクを使い、独創的なデザインでスカーフも人気を集めましたが、1948年にシルクスクリーン印刷を導入し、より多彩で細かい図柄も表現できるようになり、物語のような世界観や美しさが生み出されるようになりました。今日に至るまで考案されたデザインは1500種以上にもなるそうです。1枚のスカーフに40色使われているなら40枚の製版が必要になり、最後の四方の縁縫いも職人さんの手作業なので、1枚完成させるのに数百時間かかることもあるという手の込んだものです。お値段が高いのも当然ですね。その美術品のような美しさから額縁に入れて絵画として飾られることもある逸品です。

有名な作品として「フランス料理を讃えて」や「レジナ(女王陛下)」などがあります。

日本ではバブルの時代のブランドブームでこの“カレ”の人気が高まりました。当時大学生の私も2、3枚持っていました。よく使っていましたが、アレンジ方法などはほとんど知らず、ただコートの襟に沿わせているだけとかで、歩いていると滑り落ちて、後ろから「落ちましたよ!」と声をかけてもらったこともありました。(日本でよかった。外国なら持ち去られていたかもしれません…)宝の持ち腐れでしたね。

今ではコレクションでも数々のブランドから美しいスカーフが発表されますし、そんなに高級なものでなくとも、ポリエステル素材でプリント柄の安価なものがたくさんあります。安くても選べば色や柄などおしゃれなものも結構あります。

私自身今では“カレ”を5枚ほど持っていますが、実はあまり使いません。高級なシルクでハリがありすぎてアレンジした時になんとなく収まりが悪いのです。色柄はとても美しくて気に入ってはいるのですが、アレンジを選んでしまうんですね。ですから、より安価なものを使っています。ただ最近スカーフ自体をあまり使わなくなっているかもしれません。服自体にデザイン性のある印象の強いものを着ることが多いので、スカーフを使う余地がないというか…。でも、仕事上どうしてもベーシックなジャケットを着る必要がある時にはアクセントとしてスカーフを使う機会もあります。また、舞台の衣装をコーディネートしたり、スタイリングをする時には「何か寂しいな…」と思うとスカーフをよく登場させます。

4、5年ほど前までは「なんとなくスカーフって古臭くて」と言われ、敬遠している方もいましたが、全然そんなことはありません。2016年に放送されていたドラマ「地味にスゴイ!校閲ガール・河野悦子」の中でファッションが大好きでファッション誌で編集として働くことを夢見る主人公、河野悦子(石原さとみさん)は地味な校閲部に配属になりますが、夢を諦めることなく、地味で暗い校閲部の中で浮いていてもおしゃれをして仕事をし、数々の活躍を見せ、夢を叶えるというストーリーで、毎回おしゃれなコーディネートが登場しましたが、スカーフがよく使われていました。「スカーフをうまくコーディネートするっておしゃれなんだ!」という証のように思って見ていました。

私の姪はこのドラマを見てから「石原さとみさんのような感じの服がいい」とか言い出して、時々私のスカーフを拝借していくようになりました。

首に巻くだけじゃなく、ヘアアレンジにも使えるし、ジレのように見につけたり、カバンにつけたりなど色々な使い方ができます。

コレクションではイヤリングとつなげたり(耳が痛そう)、スカーフ使いのサンダルがあったり、元々バッグにスカーフが使われているデザインがあったりなど、新しい提案も出てきています。

たかが1枚の布ですが、その中に色や柄など美しく工夫された世界が表現されています。見ているだけでも嬉しくなりますが、コーディネートに使うことによっておしゃれに見えたり、個性を発揮したり、温度調節もできたりと、こんなに便利なもの使わない手はないですよね。アレンジの方法はたくさんありますが、幾つか試してみて自分の気に入るものを是非見つけてみてください。顔形や体型に合わせたアレンジ方法などもありますので、自分に合うのが知りたいという方はプロに相談されるのも一つの手ですね。夏場は暑かったりもしますが(首の日焼け防止にひんやり加工のスカーフをする人もいますけどね)、これからの寒い季節には大活躍します。スカーフのおしゃれを楽しみましょう!

color&image consultant SACHIKO TAKEMURA

カラーとファッション、メイクのコンサルタント。 スタイリングアドバイスや企業研修、講演、イベント など多数の企業で実績あり。