ミニスカートってハードルが上がっていませんか?
10月18日はミニスカートの日です。1967年のこの日、イギリスから「ミニの女王」ツイッギーが来日してミニスカートブームが起こったことを記念して制定されました。
ミニスカートといえばこのツイッギーが活躍し、若者ファッションがクローズアップされた1960年代からという気がしますが、その前はどうだったのでしょう。
20世紀初頭にファッション革命が起こり、現在のファッションに変わる前、女性は皆フルレングスのスカートを履き、足首がチラッと見えるだけでもハレンチと言われるような世の中でした。そのスカート丈を少し短くしたのが第一次世界大戦(1914〜1918)です。男性が出征し前線で戦っている間、男性の仕事を多く肩代わりした女性達は農作業や建築現場、兵器工場などで労働したり、バスや電車の車掌や運転手などの仕事をするようになり、より活動的な服を着る必要ができました。そこでスカート丈はやっとブーツの筒口に届くかどうかというふくらはぎ丈ぐらいの短いスカートが登場し、戦争から帰った男たちがびっくり仰天することになりました。ただ、まだこの時のスカート丈はミニスカートというには程遠い、長めのものでした。
1920年代になると若者礼賛の社会になります。戦争中に仕事につき女性に新しい扉が幾つも開かれたので、家庭での奉仕だけに甘んじようとしなくなり、自分の収入を得るようになると、女性達は自分の容姿に投資し出しました。戦争で一夜のうちに全てが無くなってしまうという経験をしたので、若くて活動的なうちに楽しまなくてはならないと悟ったからだと言われています。当時「ギャルソンヌ(ボーイッシュな女の子)」と呼ばれるショートヘアで、仕事に成功し、男性の服を着て、自由恋愛にふける女性達が現れます。彼女達は皆少年のように痩せていることが条件でした。やがて、フラッパー(おてんば娘)とも呼ばれるようになり、チャールストンや身体を震わせて踊るジャズダンスのシミーを夜通し踊り明かします。その時に着られていたのが膝丈〜太ももの中程までしかない丈のフラッパードレスでした。それまでだったら下着のスリップとして着られていたであろう裸に近いようなもので、肩に2本の細いストラップのついたシンプルなシュミーズドレスでした。
「狂気の時代」と呼ばれた20年代のミニスカートはとにかく今を楽しもうというデカダンの象徴になっていると思います。映画「華麗なるギャッツビー」の世界です。
そしてやはりミニスカートというと外せないのが1960年代です。この時代の若者礼賛は20年代のものがより若返ってリバイバルしたものです。戦後のベビーブームで60年代に20代の人口が多くなり、戦後の経済復興で誰もが一定の経済水準で生活できるようになってくると、消費者として甘やかされた若者が親や教会、国家の権威に反抗して新しい価値観を模索し始めました。彼らは何よりも強制されることを嫌い、ファッションでも親世代がふさわしいと思うものを着せようとするのに反抗します。母親とは違ったファッションを求めた女の子が選んだのがミニスカートでした。よくミニスカートを発案したのはマリー・クワントかアンドレ・クレージュか?と言われますが、20年代に既にミニスカートは存在していたので、何れにしても彼ら2人とも時代の潮流を読んで若者向けに20年代のミニスカートを復活させ、若者に受けるようにプロモーションしたのが上手かったのです。ミニスカートが似合うのは豊満な大人の女性の身体ではなく、細く長い手足の子供っぽい肉体でした。それを体現したのがミニスカート記念日の元になったツイッギーでした。ツイッギーとは細い枝という意味で、彼女は45kgしか体重のない16歳の少女でした。19歳で引退できるほどの利益を上げ、たった3年ですっぱりとモデルを辞めていますが、彼女が行くところ、ビートルズと同じような殺到が起きるほどの大衆的アイドルでした。
当時のロンドンを舞台にした「欲望」(66年)、「茂みの中の欲望」(67年)、「ジョアンナ」(68年)など多くの映画でミニスカートの女の子たちが登場します。個人的には「欲望」と「ジョアンナ」がスタイリッシュで好きです。
そしてミニスカートはロンドンだけでなく世界的ブームとなり、フランス映画の「セシルの歓び」ではブリジット・バルドーが、
アメリカ映画の「華麗なる賭け」(68年)ではフェイ・ダナウェイがミニスカートで登場します、
このブームは日本にも上陸し、日本の若い女性もミニスカートで街を闊歩しました。
ケネディ暗殺後、ギリシアの海運王オナシスと再婚したジャクリーン・ケネディ・オナシスが37歳の時に初めて公衆の前でミニスカートを履いた時に「ニューヨーク・タイムズ」が「ミニスカートの未来は安泰だ」とコメントをしました。
若者の反抗の象徴だったミニスカートは一過性のブームではなく、ファッションの中で確固たる地位を確立したのでした。
80年代になってヤッピー(都会派の若手エリート)がシンボルとなる物質社会になり、無駄に消費し贅沢するのが格好いい…という時代になります。高級なフィットネスクラブに通い、鍛えた身体を強調するようなファッションを身につけ、厚い肩パッドが入り、ウェストを絞ったパワースーツやボディコンワンピ、そしてミニのタイトスカートが流行ります。
プリンスやボーイ・ジョージなど女性的なルックのスターが現れる一方、角刈りのグレース・ジョーンズなど男性的なルックのスターも登場し、男性らしさとか、女性らしさとは一体何か?と問われる時代でもありました。
そんな中でミニスカートは女性らしさを強調するアイテムとして使われ、それはそのまま90年代に突入し、映画「プリティウーマン」(90年)では性を売り物にするコールガールの時のジュリア・ロバーツの衣装に、
「氷の微笑」(92年)では刑事を翻弄し策略にはめる大富豪の役でシャロン・ストーンが着用しミニスカートで足を組んだ有名なシーンが出来上がっています。
20年代には少年のような…、60年代には子供のような…と女性らしいセクシーさとは反対だったイメージが80年代にはセクシーさを表すものに変わったのが面白いですね。
さて現在、ミニスカートが似合う有名人といえば、菜々緒さんと米倉涼子さんでしょうか。
菜々緒さんは某タイツのCMでもミニスカート姿で登場していますが、2018年4〜6月にTV放映されていたドラマ「Missデビル」では毎回素晴らしいミニスカート姿で登場しました。サイボーグのような無表情で頭脳明晰、容赦なく人を退職させ、最終的には親の復讐を果たすというキャラクターに完璧なスタイルのミニスカートはとてもマッチしていました。
米倉涼子さんは「ドクターX 」シリーズの中で数多くミニスカートで登場しています。権威におもねることなく、まだまだ男性優位の大病院の中で、タブーとも言えるミニスカートに白衣を羽織り活躍していく姿は、周りの目を気にせず、スキルだけで渡り歩くキャラクターを上手く体現しています。
2人に共通するのは真っ直ぐでとても長い脚で人間離れしたスタイルだということです。会社や病院などミニスカートがふさわしくないとされる場所で履いていても、サイボーグのように完璧なスタイルなら何者にも犯しがたいというか、四の五の言えなくなってしまいます。これが肉感的な姿なら「ちょっとそれは…」と言われようものなのですが。能力だけでなく、スタイルも超一級という部分が重要なんですね。
80年代のようなセクシーさはあまり感じない、完璧さを表すのが今のミニスカート姿のような気がします。
こういうのを見慣れると、ミニスカートってハードルが上がっていませんか?現在トレーニングで身体を鍛えるのが流行っているのは80年代と同じ傾向ですが、それを見せつけるミニスカートはそんなに流行っていない…。完璧なスタイルに比べたら自分なんてまだまだ全然ミニスカートは似合わないって思ってしまうからではないでしょうか。
かくいう私も脚は真っ直ぐじゃないし、膝から下が短いし、スタイルは全然良くないけれど、少し前までミニスカートは好きでした。ハイヒールを履いて少しでも脚を長く見せて履いていましたが、最近はあまり履かなくなりました。特に夏場、生足でミニスカートというのは歳のせいでもありますが気持ち的に無理です。これがスタイルが完璧だったら今でも履いてるだろうな…と思います。でも冬場ならミニスカートにタイツとブーツでごまかせます!これからの季節はミニスカートにもトライしやすくなりますね。(前は夏場は暑いからミニスカートで、冬場は寒いから長いスカートだったのに反対です。)2〜3年前から買おうかどうしようか迷っているミニスカートに合わせるサイハイブーツを今年もどうしようか…と考えながらこのコラムを終えたいと思います。いい加減買いなさいよってか…。
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