ファッションショーよ永遠に
9月21日はファッションショーの日です。
1927年の今日、銀座の三越呉服店が日本初のファッションショーを開催した記念として制定されました。ファッションショーと聞くと洋服のイメージですが、当時は多くの一般庶民が着物を愛用していて、明治時代から着物のデザインの懸賞募集を行っていた三越が、選ばれた着物の発表の場として「ファッションショー」と銘打ったイベントを開きました。
モデルがいなかった当時、人気女優の水谷八重子さん(友近の水谷千重子ではありません)ら3人が、選ばれた3着の着物を着て、日本舞踊を踊ったというものでした。当時としてはとても斬新なものだったと思われます。
今ではキッズファッションショーや、雨の日ファッションショー、ホラーコスプレファッションショー、義足のファッションショー、南京錠のファッションショー、ランドセルのファッションショー、ふんどしのファッションショーなど様々なファッションショーが至る所で行われていますが、そもそも最初に始めたのは誰だったのでしょうか?
世界で初めてファッションショーを行ったのは19世紀から20世紀にかけての最も著名なデザイナーのシャルル・フレデリック・ウォルトです。初めて生きた人間をモデルとして自分の作品を着せて顧客に披露し、自己PRの天才と呼ばれ、ファッションショーのような革新的な経営戦略を行い、パリの流行を発信する憧れのメゾンを作り上げました。彼の作り上げた年に数回シーズンの新作をモデルに着せてファッションショーを行うという形式が今も継承されているんですね。
ファッションショーは上流階級に向けたオートクチュールに始まり、戦後は富裕層に向けてプレタポルテも開かれるようになります。そして段々と中産階級に向けた服飾市場が拡大し、小売業者などにアピールするための新作発表会という形で行われるようになります。
日本ではファッションショーがイベントとして大きくなるとコレクションと呼ばれます。
今ではオートクチュールはパリとローマで、プレタポルテはニューヨーク、ロンドン、ミラノ、パリの順番で行われ、これらは世界4大コレクションと呼ばれています。メディアの取材も多く、注目度は非常に高くてトレンドの発信源やデザイナーやブランドの作品の発表の場として重要な位置を占めています。東京でもコレクションが行われます(東京を入れて5大コレクションと呼ばれる場合もある)。他にもマドリッド、バルセロナ、サンパウロでも行われますが、コレクションには微妙なランク付けのようなものがあって、やはり注目度では4大コレクションがAランク、東京コレクションはB’ぐらいではないかと私は思っています。
コレクションの話をするとよく「東京ガールズコレクションはどういう扱いですか?」と聞かれます。やはり憧れのファッションモデルや人気タレントが多数登場し、テレビなどでもよくOAされているので、認知度は高いのでしょう。近年の日本では、リアル・クローズと呼ばれる中産階級の若者向けの服を対象としたファッションショーが成立していて、その中で観覧有料の大規模な興行として成功したものがいくつかあります。その中の一つがTGC(東京ガールズコレクション)です。初めてこの形で成功したのは2002年に始めた神戸コレクションなんですが、TGCの人気の方が上回っています。この手のファッションショーでは観客席の後ろ側や出品者の実店舗でモデルが着た服の展示即売が行われたり、携帯やネットのウェブサイトで気に入ったものをすぐに買えたりして、満足度の高いものになっています。
ファッションショーはやはりどれだけ注目されてメディアに取り上げられるかが成功に大きく関わってきますので、作品はもちろんですが見せる場所や演出、どれだけ新しいことができるかにも力が入れられます。
1963年には代々木のアメリカ軍の軍用地、ワシントンハイツで外交官夫人を招いて着物ショーが行われました。80年にはスキー列車内で水着ショーが行われ、83年には大阪市営地下鉄50周年記念で電車の中でファッションショーが行われています。
21世紀に入ると2005年に米ディスカウント大手のターゲットがロックフェラービルの壁面をキャットウォークにパフォーマンスを行い、モデルに扮したスタントマンが9Fから降りてくるという演出をしています。
2014年に雑誌「Precious」が創刊10周年を記念して銀座のソニービルでグッチとコラボした空中ファッションショーを行い話題になりましたが、すでに行われたことのある演出だったんですね。壁面の垂直ランウェイを歩いてくるモデルさんの顔や体に力が入っているのと、服は重力で下に垂れ下がるので、服の良さがわかりにくいな…と感じてしまいました。
このターゲットは07年にも斬新なショーを行っています。ホログラム映像を使ったモデルのいないファッションショーです。ただ、これも透明人間がモデルみたいで着た感じがよくわからないし、動きが早くてデザインもわからないので、ファッションショーとしてはチョットという感じでしょうか。話題にはなりましたが…。
09年にはアレクサンダー・マックイーンが春夏コレクションでショーのライブ配信を初めて行い、今まで特権のある限られた人にのみ見せていたショーを同時に世界に向けて発信し、話題をさらいます。
12年にはイスラエルで航空機の中のファッションショーが行われます。
16年にはフィンエアーとヘルシンキ空港共同で滑走路を舞台にファッションショーが行われるなど、様々な工夫が見られます。
今年2018年の6月19日に世界初のロボット用アパレルブランド「ROBO-UNI」が渋谷で史上初のロボットファッションショーを行いました。ロボット用なので、普通のファッションショーとは位置付けが違うかもしれませんが、近い将来家庭にロボットがいるのが珍しくなくなったら、犬に服を着せるように、ロボットにも服を着せたくなる人もいると思います。なので、ファッション市場の開拓としては注目したい所です。
斬新なこと、変わった演出をすればするほど手間も時間もかかるし、費用も莫大になってしまいます。ファッション市場は縮小傾向だと言われていますが、今の所このファッションショーという形式のビジネスモデルはメディアの注目度からみても完璧だとも言われています。ということは、莫大な費用をかけてでも各ブランドが力を入れるものであり続けるでしょう。ただ、もっともっとファッション不況になっていったらそんなに費用はかけられなくなってしまうんじゃないかな?その時は160年ほど前に出来たファッションショーの形態そのものが変わってしまうんじゃないか…と思います。ファッション好き、ファッションショー好きの私としてはそんな日が来ないことを願うばかりです。
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