レディライクな格好してたらレディらしくなれるかな?’18-19AW Fashion Trend Series④

18-19年秋冬シーズンの女性らしいスタイルとして、秋色を使ったレディライクなイメージが広がっています。

ではこのレディライクなイメージってどんな感じなのでしょう?

そもそもレディというのは貴婦人や淑女を表す言葉です。今はただただ性別の女性を表すレディースという言葉を身近に使っていますが、本来は上流階級の女性のことを指します。レディライクとは育ちの良い上品な女性や女子として相応しいことを言いますので、ファッションでは品のある貴婦人のようなスタイルのことになります。私個人の見解としては、ただ女らしいというだけでなく凛とした品の良さの中に漂う少しの色っぽさを兼ね備えた大人のファッションだと思っています。

20世紀に入ってファッション革命が起こり、現在のファッションに変わるまでのいわゆる「歴史服」がどういうものであったのかは、お金持ちや王侯貴族達が残した肖像画から分かることが多く、その多くがレディライクなものだと言えるでしょう。ですが、今私たちがレディライクなイメージとして取り上げるのは歴史服ではなく、1950年代や60年代のファッションです。

往年の女優達が映画の中で着ている服で確認できます。

クールビューティの代表で、育ちの良さからくるレディぶりが他の女優には真似ができない存在だった“グレース・ケリー”。「泥棒成金」や「上流社会」での品のある美しさは後にモナコ公国の公妃になるに相応しいと思わざるを得ません。

50年代の新しいファッションリーダーだった“オードリー・ヘップバーン”。オードリーカットなどのショートのヘアスタイルやサブリナパンツなどコケティッシュなファッションも流行らせましたが、「パリの恋人」や「ティファニーで朝食を」「シャレード」「おしゃれ泥棒」など多くの作品でセンスのある上品で清潔なレディファッションを見せています。

そして中学生の頃、私が大好きだったヒッチコック監督の作品達。「めまい」の“キム・ノヴァク”や「鳥」の“ティッピ・ヘドレン”、「ダイヤルMを廻せ」の“グレース・ケリー”、「北北西に進路を取れ」の“エバ・マリー・セント”など、皆クールビューティで品があり、どこかとり澄ましているような主人公の顔が恐怖で歪むのをドキドキしながら観ていました(私は変態か…)。

「終着駅」の“ジェニファ・ジョーンズ”はディオールのスーツで非の打ち所のない人妻の表面(うわべ)を表現していました。

「危険な関係」や「エヴァの匂い」の“ジャンヌ・モロー”。彼女はどこか退廃的な雰囲気があるので、典型的なレディではない印象ですが、ファッションはレディライクなものでした。

「昼顔」の“カトリーヌ・ドヌーヴ”。シンプルで品のあるサンローランの衣装を身にまとい、昼は淫売、夜はお金持ちのマダムという二重生活を持つ主人公を演じていました。レディライクなイメージに色っぽさを感じるのはここから来ているのかもしれません。

こうして見るとやはりレディライクなイメージは素敵です。具体的にどんなファッションがレディライクなのか整理すると、①きちっとした印象のロングコート、②シンプルなデザイン、③腕は出しても胸元は開けない、④ストレートかフレアの膝丈か膝下丈の長めのスカート、⑤ドレスやスカートスーツなどが多い、⑥それに帽子やスカーフ、ロンググローブなどをプラスする、などを取り入れればレディなスタイルの出来上がりという感じです。

ただ、このスタイルは60年代に保守的なママに押し付けられるファッションとして、若者達に嫌われ、ミニスカートや宇宙ルックなどの若者ファッションが生まれることになります。ですからそのまま着ると一気に老けた印象になってしまいかねません。やはり今風のアレンジが必要だと思います。

今季のランウェイからアレンジ方法を見ていくと、①レザーやツイード、ニット、ベルベッドなどの温かい印象の素材を使う、②ドレスのヘムライン(裾)がランダムなものを選ぶ、③少しの肌見せを入れる、④カジュアルな印象のブルゾンを合わせる、⑤派手な色やメタリック、パイソンなどの目立つブーツを合わせる、など、ただの“シンプルで上品”では終わらない印象にしてみましょう。

私が以前に飼っていた犬の名前が“レディ”でした。上品でおっとりしていて、本当に「名は体を表す」という風情の子でした。ひょっとしたら、ファッションで外見を上品にしてみたら、少々がさつな子でも段々と品良くなっていくのかもしれません。姪っ子に着せてみようかな…(元気が良くて表現が素直とも言える)。レディライクなスタイルを身につけて電車で足を広げて座られた日には目も当てられませんが…。実験してみましょう。またこの結果はいつの日か皆さんにご報告出来ればと思います。

color&image consultant SACHIKO TAKEMURA

カラーとファッション、メイクのコンサルタント。 スタイリングアドバイスや企業研修、講演、イベント など多数の企業で実績あり。