ハイヒールってすごい!

9月2日は靴の日です。

皆さんはどんな靴を履きますか?私は何と言ってもハイヒールです。

初めてハイヒールを履いたのは大学生になった時。バブル時代の終わり頃で、大学へもボディコンの服を着ていくような学生でした。服に合うからハイヒールを履いていたのですが(ボディコンの服にフラットシューズやスニーカーは合わないですもんね。)、履いた時に背が高く、足が長く、スタイルがよく見えることが嬉しくなり、その時からずっとハイヒール以外の靴は持っていないというぐらいのハイヒールマニアです。

最初は7cmヒールぐらいの高さだったのですが、段々と高くなり今では10cm以上のヒールでないとハイヒールとは言えないと個人的には思っています。(本当は7cm以上のヒールをハイヒールと呼ぶのですが。)

その10cm以上のスティレットヒール(キリのように先の尖った細いヒール)を履いて京都駅から二条城辺りまで4kmの道のりを1時間以上かけて夜中に歩いたこともありました。これは流石にきつかったです。当時のBFの勢いに合わせたのですが、男の人は細いハイヒールで長く歩くのがどれほど大変かなんて気付かないですからね。

その他、ハイヒールでパリ観光をしたり伏見稲荷や竹田城の山を登ったり…。

竹田城を登っている時は後ろの人に「見て!あんな靴で登ってる!」と言われたりもしました。(その時は急遽行くことになったので山登りをするつもりはなかったのですが。)ミラノに留学している時はウクライナ人のクラスメイトに「なぜいつもハイヒールを履いてるの?」と聞かれたりもしました。その時は私にとっては靴=ハイヒールだったので、何が不思議なのか分からなかったんですが…。どなたかがいつでもどこでもハイヒールを履いているという人がいたら是非お目にかかりたい!とブログに書いておられましたが、「はい、それは私です」と心の中で思っていました。やはりハイヒールは歩くのが大変で、特別な時に履くものというのが普通の感覚なのでしょう。

ではこんなに歩くのが大変で、機能的とは言えない、拷問だという人もいる靴がなぜ生まれたのでしょう?ハイヒールの起源は所説あって、どれが本当なのか定かではありませんが、

有名なのは、中世ヨーロッパでは窓から糞尿を投げ捨てていたため、道に落ちた糞便でドレスの裾を汚さないためにハイヒールが生み出された。という「窓から糞尿説」です。

確かに当時は窓から道端に糞尿を投げ捨てていたようです。底の厚い靴も存在しましたが糞尿対策が主な目的だったわけではないらしいですし、今日のハイヒールとは直接関係はないと言われています。話としては面白いんですが。

道が汚かった中世人が履いていたのは「パッテン」というオーバーシューズ(靴の上から更に履く靴)です。木で出来た下駄のような形をしていました。素材や形状を変えながら20世紀まで用いられ続けたもので、汚い道対策の他に当時価格が高い割に丈夫でなかった靴の補強や整備されていない荒れた道からの足の保護などの役割を果たしていました。形状から見て今日のハイヒールとは関係ないと思われます。

次に1533年にイタリアから仏王アンリ2世に嫁いできたカトリーヌ・ド・メディシスが最初に履いたという「カトリーヌ説」。

14歳で嫁ぎ、ルックスも良くなかったので夫のアンリは彼女よりずっと背の高い愛人の元に通い詰め、ないがしろにされていたカトリーヌは、自分の立場を維持するために宮廷や国民に対して自己アピールをする必要がありました。その時にオシャレなハイヒールを思いついたというものです。

これは年代的に怪しいです。ハイヒールが用いられていたという証拠が初めて確認されているのは1580〜90年代ですので、50年ほどずれています。そしてイタリア人のプライドの話として「この辺りの時代にフランスに伝わった大抵のものはカトリーヌに帰する」と言われてしまうので益々怪しいです。本当かどうかわかりゃしない。

第3にヴェネツィアを中心とするイタリア、スペインで用いられていたオーバーシューズ、チョピンが起源という「チョピン説」。

パッテンと同じくオーバーシューズですが、こちらはかなりファッション的な用途で用いられていて、細かな装飾が施されていたりして美しいものが多いです。イタリアの貴族の女性や高級娼婦が履いていたもので、オシャレのためというのはもちろんですが、男性にすがらないと歩けないので男性の力を誇示するためとか、娼婦に至っては逃げ出さないように走れない靴を履かせたとかいう話もあります。今日のハイヒールとは形状は違っていて、どちらかといえばウェッジヒールの靴の方が似ているのですが、なぜかこのチョピン説は海外でも有力視されています。

第4は馬に乗る時にあぶみに足を掛けやすいように踵を高く作った靴が起源だとする「乗馬靴説」です。パッテンやチョピンは足全体を高く持ち上げていたのに対して、踵だけを上げているので今日のハイヒールに一番近いかと思われます。この乗馬履をファッション化させたものがハイヒールだという説です。この乗馬靴はアジアで古くから用いられていたものでしたが、昔から用いていたペルシア(今のイラン)のサファヴィー朝のアッバース1世(1571−1629)がオスマン帝国に対抗するために西欧諸国と連携することを模索し、その時に欧州人の目に止まり流行ったというものです。私はこの説が一番的を得ているように感じます。一番面白くないんですが…。

これだけいろいろな説が出てくるのはハイヒールが人々の興味をそそる、魅力的なものだという証に思えます。

ハイヒールにエロティシズムを感じる男性は少なくないですし、変態チックにフェチなものの象徴みたいに扱われることも多々あります。日本ハイヒール協会が「ハイヒールを美しく履きこなすことで、日本人女性にもっと自信を持って欲しい」という活動目的を掲げていることが海外からは性差別的だと一斉批判されたり、仕事やフォーマルなシーンでハイヒールの着用がマナーだとされてきたドレスコードに対して、身体的な性別によってファッションを強制することに異議を唱える「ハイヒール反対運動」が起こったりと、とかく性的なものと捉えられがちですが、私自身は男性の目を意識してハイヒールを選んだことはありません(そう思っているだけで本当はちょっと意識してたのかな?)ただ、ハイヒール自体のフォルムの美しさ、それを履いた時に格好良く見えるのが好きなだけです(膝から下が短いのがコンプレックスで、あと3cm足が長かったらフラットシューズも履けるのにって思います。)だから、性的なものだとか、性差別だとかそんなものはどうでもいいのです。強要されるのはおかしいと思いますが、好きな人、履きたい人が履けばいい。女性だけのものとは思っていないので男性も履きたければ履けばいいと思います。背の低かったルイ14世がルイヒールと呼ばれるハイヒールの靴を履いていたのは有名な話です。映画「王は踊る」の中でもルイ14世だけが他の人とは違いヒールの高い靴を履いているのが描かれています。(ハイヒールというほどの高さではないんですが…)背の低い男性向けのシークレットシューズなんかもありますが、シークレットにする必要はないんじゃないの?と思っています。それこそ男性に対する性差別だと思います。

友人から「ハイヒールを履くと不細工な歩き方をする人が多いのに、格好良く歩くね」と言ってもらったことがあります。それはずーっとずーっと履き続けているからもう慣れてるんですね。普通の靴のように歩けます。そんな私に最近ハイヒール危機が訪れました。いつものように細いハイヒールで丸1日の研修を行っていた時です。ずーっと立ちっぱなしだったんですが、突然ふくらはぎがつったのです。しかも2回も。それ以来研修の度に足がつります。受講者の方に気づかれないよう素知らぬ振りで我慢するのも大変です。近年自宅でのデスクワークが多く、靴を履く機会は以前より減っていますし、完全な運動不足で足の筋肉が衰えてきているのでしょう。

これはヤバイ!おばあちゃんになってもハイヒールを履く!と思っているのに黄色信号だ!

と慌てて歯磨きをしながら踵の上げ下げ運動をして少しでも鍛えようとしている私でした。

運動不足の解消にも一役買う、ハイヒールってすごいですね。

いつものコラムより倍近くも長い文章になってしまいました。これも私のハイヒールへの思い入れの強さからだとどうかご容赦ください。

color&image consultant SACHIKO TAKEMURA

カラーとファッション、メイクのコンサルタント。 スタイリングアドバイスや企業研修、講演、イベント など多数の企業で実績あり。