帽子のマナーについて思うこと

8月10日は帽子の日です。

防寒、防暑はもちろん、スッピンや寝ぐせのごまかしなどにも役立ちますが、上手く使えばシンプルな装いに帽子一つでオシャレ上級者に見せることができる、印象的なアイテムです。

帽子の似合う有名人としては、中居正広さん、テリー伊藤さん、渡部陽一さん、上島竜兵さん、女性ではJUJUさん、萬田久子さんなどの名前が上がってきます。アンケートではさかなくんなども登場しているようですが、彼のは帽子というよりも、キャラクターのかぶり物…といった方がいいのでは…。

懐かしい人では月亭可朝さんのカンカン帽。トレードマークになっていましたね。他にはアパホテルの社長、元谷芙美子さんもいつもとても印象的な帽子を被っておられますね。女性社長としての威厳や知性を華やかに演出する手段として帽子を使っておられるそうです。1年分30個をまとめ買いするほどの思い入れのあるアイテムなのだとか。

帽子の起源は定かではないのですが、原始時代から存在していたことが確認されています。日本でははにわにも帽子らしきものを被ったものがあり、人類の歴史と共に発達してきたものなんですね。

日本では帽子は独自の進歩を見せ、神代紀には作笠(かさぬい)、そこから冠、笠、烏帽子、頭巾などが登場してきます。

安土桃山時代にはヨーロッパから帽子が伝来し、南蛮笠や南蛮頭巾などと呼ばれていました。織田信長の南蛮かぶれは有名ですね。伝記に黒いビロードのソンブレロを被っていたと記されています。またこの時代に綿帽子が生まれ、始めは男性も被っていたそうですが、現在は花嫁さんが被るものになっています。このころまでの帽子は今となっては伝統装束を身につける時や時代劇でしか見かけない、一般的ではないものになってしまっていますね。

明治以降から今の帽子文化が始まります。明治元年が1868年ですので、まだ150年ほどしか経っていないと言えるでしょう。

先日姉が大正時代のモボ、モガをテーマにした結婚式のパーティーに呼ばれました。招待客もその時代の雰囲気でお越し下さいというものでした。1920年代の西洋文化の影響を受けたファッションをしていたのがモボ、モガ(画像①)です。1920年代といえばアールデコの真っ只中、映画“華麗なるギャツビー”(画像②)の世界ですね。

この頃の服装としては、ひざ下丈の長めのスカートや「アッパッパ」と呼ばれた夏素材の大きめのゆったりとしたワンピースです。ただ、それだけでは中々当時の雰囲気が出せません。

決め手となるのは頭にぴったりフィットする釣鐘型の帽子「クローシェ」か、ショートボブかフィンガーウェーブ(マルセルウェーブとも呼ばれた)のヘアスタイルです。ヘアスタイルは中々変えられないので、丁度私が服に合うクローシェを持っていたのでそれはどうかという話になり、試着してみると一気に当時の雰囲気になり、かなりオシャレな印象になりました。ところが、パーティーは夜で室内であることが帽子のマナーとしてどうなのか…という話になり、結局帽子は断念し、いつものヘアスタイルにアンティーク風の髪飾りをつけ、アールデコ調のネックレスをつけただけで出席となりました。あまりモガっぽくはなかったです。私としてはかなり残念です。私だったらそれならショートボブのウィッグにキラキラ光るヘアアクセサリーを用意するのにな…なんて。

本来の帽子のマナーとしては、女性は服の一部と見なされて、誰かの視界を邪魔していたり、人に不便をかけている時以外は帽子を脱ぐ必要はないというものです。英国ヘンリー王子の結婚式(画像③)の時も、帽子を取ることを特に注意される教会の中なのに、ほとんどの女性はオシャレな帽子を被ったままでした。男性は基本的に屋内では帽子を着用してはいけないことになっています。時間帯などは特にマナーにはないようです。

ということは帽子を断念する必要はなかったのかもしれませんが、日本では小さいころから「室内では帽子をとりなさい!」などと男女の区別なく叱られたりして、なんとなく室内で帽子はマナー違反。特に食事中などはとんでもない!といった感覚の人が多いのではないでしょうか。不快な思いをする人がいるかもしれないという点では周りに配慮して断念するのも日本独特のマナーとして正解だったように思いますが、どうするのが正しいのか随分議論しました。

ただ、総合的に考えると帽子のマナーというよりも、フォーマルのドレスコードとして夜は光物の小物が望ましいので、帽子の素材が光るものであればいいのですが、そうでなければサテンのターバンにするとか、光るヘアアクセサリー(画像④)をつけるほうがよりよかったのですが。姉に相談されたのがパーティーの前日だったので、そんなものはない!と一蹴されてしまいました。もっと早くに相談してよ〜。帽子に光るアクセントをつけたらどうなんだろう…。フォーマルの基礎知識についての講座を行っている私にとっても判断がつかない問題でした。まだまだですね。精進します。

たかだか150年ほどの歴史しかない今の日本の帽子文化。洋服と共に入ってきたのですが、洋服と違って帽子はいつもそして誰もが着用するものではありません。その分帽子に対する感覚もマナーも成熟しているとは言えないように思います。日差しを遮るなどの実用的な目的だけでなく、もっと帽子のオシャレを楽しむ人が増えていけば、マナーも周知されるようになり、迷うこともなくなるのではないでしょうか。

とそう思いながら、あっついので実用的な帽子を被って犬の散歩に行ってこよう!


color&image consultant SACHIKO TAKEMURA

カラーとファッション、メイクのコンサルタント。 スタイリングアドバイスや企業研修、講演、イベント など多数の企業で実績あり。